with ロクジュウゴ文化祭実行委員会
日記
卯月二日
夕方、隣駅でやってるというので文フリに初めて行く。帰りはモノレールでなく、運河沿いを歩いてくる。その足で新宿に出、喫茶ピースで詩かく。9じ半閉店、大崎駅から大井町経由で歩いて帰る。途中、関ヶ原公園のベンチで詩かく。サンオウ(活動拠点)到着、墨をスって習字。更新用の原稿打ち込み、推敲。Twitterに投稿。朝7じすぎ、このたいむらいんを書いているところ。
卯月三日
昨日のたいむらいんを更新しているうち午に。喉が乾いて、近くの複数の自販機に、メッツコーラとクラフトコーラを買いにいく(さいきん偽物コーラにハマっている)。寝る。夕方に起き、家にいる後輩と勝島運河に一服しにいく。インデザで「偏向」6月号の版組つくる。深夜、勝島運河沿いからユーゴスラヴィア(京浜運河と合流するあたり)へ散歩。橋の下で、「My Color of Innosense〈Third Rec〉」を流す。やっぱり渾身の出来。サンオウ(家)に戻り、「白石火乃絵の現在」執筆。午前4じ現在。
卯月四日
4時間寝て、午前中目を覚ますと、隣で寝ていた美食家志望の後輩がいなくなっている。荷物のあとがきれいなので実家に帰ったかとおもっていると、絵を描いている後輩がやってくる。新しい大きめのキャンバスをいくつか買い出してきている。袋の中から、赤いきつね(きつねが2枚!)を取り出し、お湯を沸かし始める。じつは昨日、赤いどん兵衛を美食家志望に譲ったので、うらやましくなり近くのまいばすけっとに買いに行く。戻ってくると、美食家志望も還ってくる。なんと、池袋西武のデパ地下から高級弁当を買ってきてくれている(おごり)。たくさんの小さな妖精たちが舞っているような味覚の和食で、とても満足。しばらくして絵を描いているやつは絵を描きはじめ、美食家志望は前にお台場で買ったRG(リアル・グレード)のストライク・ルージュのガンプラを作りはじめたので、火乃絵は墨を擦り、書の準備をはじめる。以後4時間習字。夜。家主の友達帰還、ランドセルを置いてすぐ飛び出す小学生のように、着替えてすぐ呑みに出かける。美食家志望がようやく実家に帰る(去年末からほぼこちらに住んでいる)。筆と硯を洗い終え、気分転換に絵を描いているやつと散歩へ出る。サッカーボールを持っていったので、ヒミツの公園の芝生でPK対決。地面が濡れていて靴がすべるので裸足でする。長きにわたるサドンデスの末、いちおう火乃絵の勝利となる。Tohji(Mallboyz)の新曲を聴き、ちょっとした心霊現象にも会いながら還ってきて、絵を描いているやつは絵の仕上げ(さきに終わって寝る)、火乃絵も昨日の「白石火乃絵の現在」を仕上げにかかる。さっき脱稿。午前5じ現在、この日記を書いている。美食家が買ってきていたヤミーズベーカリーのパンを食べよう。子供のような生活をしている。
卯月五日
目が醒めると、隣で寝ていた絵を描いているやつがいなくなっている。夢の途中だったので二度寝する。昼下り、目を覚ましかけつつ少し長めの夢日記を書く。あともうひと息夢からの語りかけが足りなければ、夢日記を書くにいたらず、うつつの些事によって即座に記憶の座を奪われていただろう。
運河まで少し散歩する。今日はひさしぶりのダメな日の予感がする。あとでいくつか理由はわかったが、やっぱりよくわからないことの方が多い。天気もよいのに。還ってもういちど寝る。夢日記が多かっただけに、無意識の引力がつよいのだろう。
夜になっている。動けそうになく、畳の上に横になったまま昨日放送された『王様に捧ぐ薬指』第六話を観る。ほんとうにひさしぶりに火乃絵に刺さるドラマだ。他人ごとでは観ていられない。イデーが活いているからだ。
一週間ぶりくらいに風呂に入る。生活のうちでいまもっともおっくうなことだ。
深夜1じ、今日の文章を書かなくてはならない。缶ジュースを買いに行くついでに運河へ散歩に出る。運河対岸からいつもはいかないマンション付きの公園に行く。ベンチで三角の星を見るながらhi-liteを喫う。普段はでない、ため息がついて出ることに気がつく。
還って「白石火乃絵の生活page1」を書き始める。岡田麿里さんについて。午前3じ見開き一頁が了がり、ここで止めにしようかとおもうが、再度缶ジュースを買いに出て、西大井側の公園に行く。大船に住んでいる友人が地区ボランティアで世話している猫のカイが亡くなったことは、さいしょ目醒めたときに知り、ぜんぜん整理が追いついていなかった。三、四度、火乃絵も触れ合ったことがあり、たくさんの所作と声とニオイとが思い出されて来る──人懐っこく、他の子に構っていると割って這入ってきたり、自分のじゃない餌も食べちゃうなどするらしく、なわばり仲間のなかでいちばんやんちゃで、それでいて不器用で憎めない子だ。こちらの言葉が通じているようにおもわせる挙動が多く、いままで会って来た猫のなかでもつよく印象に残っている。まだあそこにいる気がする。ショートピースの煙をあげ、改めて追悼する。R.I.P.Kai. I remember you. またどこかで会おうね!
──なんとか戻り、もう見開き一頁に空海について書く。いつもより結びが甘いが、日も高くなってきたのでつづきは翌日に送る。投稿の準備。午前6じ半現在。
卯月六日
昨日のたいむらいんを上げたあと、「偏向」6月号の編集をしていた。午すぎに寝る。夕方4じ、絵を描いているやつが来る。いやなことがあった。一週間くらい前に、コナンの映画の二回目に行ったときと、内容はちがえどこれが二度目だ──コナンのときの方がひどい、こんな邪悪がわたしたちの生活すべてを支配しているだなんて、言ったって誰も信じないし、陰謀論者にされるどころか、本当のことなので言ったら殺されるか、そうでなくてもただただ死にたくなるだけだ。今回のことだって、もうそんなことがわかったら警察を頼ることもできない。〝ぼくたちは法律を守るのに、法律はぼくたちを守ってくれない!〟というカフカの叫びしかない。いや、法律がぼくたちを殺すのだ──もう酒でも呑もうといって、缶チューハイ片手に大井町へ行き、カラオケに2時間這入る。十代のときまでとはいわないが、まあかなり荒れた。しかも、歌ってるあいだに「偏向」のグループラインに同人のイチムラから、「白石火乃絵の現在」にある、400枚のアナログ写真が白飛びしていた件について、〈400枚も一気に現像に出すのはデジタル感覚に侵食されている証拠だ、フィルムは一本ずつ現像に出してカメラとの信頼関係をゆっくり築いていくべき〉というような内容の非難が送られてきた。ただでさえ外のことでバッドに入っていたのに、これで内も完全にやられた。その通りだ。この文章は火乃絵が文章体に書き換えたものだが、これは比喩だ、火乃絵と他者との関係の。ずっとこうだ、こういう風にしか人と付き合えない。距離がとれない。このコミュニケーションの不能性は、人間関係だけでなく、セックスにもあらわれる──ようするに下手ということだ。根源的には、じぶんとじぶんの肉体の関係がこうなのだ。自傷行為てきにしか肉体を扱えない人間が、他者の肉体を愛することなど不可能だ。男女関係まですべて言い当てられている。そんなにいってくれるなよ。DigItal-AnaLog(ue)を書いているのは、おれがデジタル人間だからだ。「初音ミクの消失」をうたう。できることなら消えてなくなりたいよ….。400枚は、どうしてそうなったかといえば、わかるまい、大切なひとたちみんなと縁を切り、引きこもり生活の果てで狂ったように一ヶ月全身全霊で散歩道の撮影に打ち込まなきゃならない愚物の心が……現像に出している余裕がどこにあったというんだ? デジタルの触れないものを写つそうとしているんだ、はなから。白飛びしてたのは、完全燃焼の証拠だ。写真には映らないものが撮りたかったからだ……。もし白飛びしてなかったら、一篇の詩も書かなかったし、そもそも白石火乃絵だっていない。一本ずつ現像に出せるような人間だったら、詩も書いていないし、愛する人と別れたりすることもなかったろう。だけどそれはおれじゃない誰かの話だ。そいつは「駆け抜けて性春」なんかやったりしない。これこそがおれのアナログの現実だ。絵を描いているやつは同い年の友達と遊びにいって、火乃絵はひとり立会川へ下る。そんでもって、坂の途中で立ち止まる。「17のときからも、19、24のときからも、なんも変わっちゃいねえじゃねえか!」。サンオウ(家)に戻って来てから、午前3じまで「偏向」6月号の編集。今日更新分の自分の原稿はいっこうに手がつかない。「My Color of Innosense〈Third Rec〉」をヘッドホンでかけながら外の階段上のスペースでhi-liteを吸っているが、足がとまらないので昨日とおなじ西大井側の第一京浜沿い公園へ行く。最後まで聴いて戻るが、やはり手がつかない。飛ぶこと≠自殺について書きたいが、今日書いたら自殺が勝ってしまう気がする。前に書いてあったので、今日書く予定だったのと同じ内容のメモをしのぎとすることにする。けっきょく、こうなった元凶はコナンの映画のときからなのだとおもう。あの後、あんまり具合が悪いので、その足で仕事終わりの親友に会いに行って打ち明けるも、「その話キョーミねえわ」と言われ、そのときは自分でも「そうだな、久しぶりの呑みの誘いに持って来る話じゃねえな」といって、合わせたのだが、やっぱりお腹の底に食い入った虫がどかない。誰にもいえないんだ…まあ自殺するよか殺されたほうがマシだからこのさい書いておく。どうにでもなれ──コナンの映画に一緒にいった後輩が、劇場内に財布を忘れた。まだ見つかっていなかったから、次の回の上映が終わるまでに交番にも届いてないか訊きにいった。着くと、もぬけの殻で、オフィスの近くを見回したがどこにも見当たらないので中で待つことに。5分後、二人の巡査が帰ってくる。後輩が遺失物届けに記入しているのを後ろの壁にもたれて眺めていた。3分くらいして、奥に行ってたもうひとりの巡査が声をかけて来た。「写真撮ったよね、2枚(語調がやけにのぼせている)」。たしかにiPhoneで撮った、透明の機動隊とかがつかいそうなシールドに反射する外の街がきれいだったから。ついでに、ワイヤー入りの窓をとおしても。「セキュリティのこととかあるから消してもらえるかな」。写真ライブラリの画面を見せて、目の前で消したことを確認させる(だが、何を撮ったのかには全く興味がなさそうだった)。「よくわかりましたね」そういうと、変な間があって、「ぜんぶじかに見てるから」。それからちょっとして、ふっと闇に姿をけす幽霊みたいに、奥の部屋に消えていった。後輩が書き終わったので、それで交番をあとにした──あいつ、調子に乗ったな、とおもった。まったく、いい事ばかりありゃしない。よりによってこんな不届き者相手にヘマをしないでいただきたい、いや不届き者はそっちか──好きなようにしてくれよ。漫画が現実になるのはそういい事ばかりではないと知る。──何はともあれ、外のことは外のことだ、外のせいにしちゃいけない。この内をどうにかしなければ、すべて自己に返さなければ、現実逃避ということだ──でも絵を描いてるやつには同情する。お前は悪くない。ロマンチックが嫌いだからやさしくできないんだ。朝7じ現在。
〈新自由詩篇〉123
1
祭が呼んでいる…窓の外は五月の青空だ…祭がよんでいる
三日間の初日、おまえは行かなかった。同人誌をやってるのだから、写真でも撮りに行き、ルポルタージュをかくことだって出来るのに、とりいそぎやるべきこともないのに、
おまえの足はそっちへ行かず、東京駅に向った…丸善に『イリアス』を買いに行くのだ。あえて …
おまえの出番は…とっくの十一年前に了っているというのに…最終日を待つかのように、クラブの隠し玉もあるかのように…庇のかげでするどい銀光に差させるがまま。
祭が呼んでいる…おれは青空のただ中だ…祭をよんでいる
かどかわしがあったがための気がかり
いないのにいる、
あの日のおれのように、あの日のおまえのように
2
卯月、卯月
うさぎの月─兎の年
五月、この疼き─
卯月、卯月、卯月、卯月
運河沿いのこの町ちかく
隣穴にうさぎが来ているのを知った、
令和のポエットの本〈一冊〉、狩猟バッグにすべりこませ
疼きの方角へ弓をひく─
兎が逃げた!
卯月、この疼き─ 兎の 月
アリス アリス
─生きのびてきたんだな、この現代まで
下心ありありの邪しき狩人─
五月の恋人をひとり数える
何が新自由詩だ、
また十四行になっちまった!
おお詩人の恋! 老嬢 よ、
非数をおくれ。三十 一 文字からきみを連れ出す─
3
〈ベッドで慾望をもて余ました獨身男性の詩〉
若きディランがその名のゆらいを亞米利加で客死したウェールズの大詩人トーマスからとったのではないかと訊かれ答えたセリフ─
おう、アジア男子のぼくはベッドをもたぬいそうろうの身、
中根公園裏のマンション2F住いの幼少より、下の芝生に落っこちたくて仕方なかった
母親の膝じゃ枕がたかくて睡れない
沼、水蓮、闇黒への垂涎─
陰毛よりも陰湿な植物の家。
マイホームだかドリームハイツだか、
熱湯を注いだら暗茶虫のあふれ出すあのマンホールにしかないよ、
よもぎ色の三級河川の床に臥したいな。
関ヶ原公園に着くと、みけ、
遊具の下に、ちゃけ、
立ちションをしたくて来た、すまないが
ナワバリ入りさせてもらうよ。
ああ卯月の疼き もて余まし
大崎くんだりから線路端の小径を上ってくると
(こゝには祖母と歩いたあじさいの柿の木坂が匂っている)
丘の上の大井町の呑み屋横丁の出口でサラリーマンの男女ら、
女1( の花柄のワンピースが似合いそう 茶髪、桃肌、表情やわらかく、白 )(火乃絵を指し、)リアル・パーソン
男1( 目尻と口元にしわ、スモーカーフェイス 高身長、やせ型、黒髪セミロング、瞳大、 )たったいまジャングルから出て来たみたいだな
おうい、おれが真人間ならあんたら虚か如何? 呑み屋がたくさんあるのに、線路端のフェンスにもたれて缶チューハイをやってるあんたらはさぁ!
ポストモダンワールドエラはこんなとこにまで浸透してんのか、丘の上にまで─
おれはといえばいまいましくも 戦後昭和のおもかげある小さな大崎工業団地をぬけ、
詩を書いている人のくせ、慾望のあとさきやこのペニスのつかいみち、生殖や交配、配偶の未来について考えながら這い登ってきたというのに、
〈ベッドで慾望をもて余ましている獨身男性の詩〉
VS
関ヶ原公園。猫たち、かえるの合唱─。
─すまないが、火乃絵もお仲間入りさせていただくよ
あううん、あううん、あーん、おにょーん、
あううん、あううん、あーん、おにょーん、
あううん、あううん、あーん、おにょーん、
あううん、あううん、あううん、おにょーん、…
俳歌001─009
001
Ⅰ
人肌のでんせつ 青春の灰
ひきずり
火曜日
活きづく緑 氷いろと紫
ひゅう
Ⅱ
恋せよ 恋せ、
火乃絵に 恋せ
乙女、昏い瞳よ。
嵐 と 涙
つぐないはしない
つぐないはいらない
Ⅲ
街のにおいが這入り込んだ
002
五月立つ
また始まった
──何が。 祭が
天女を泣かす十代が
*
あらし はがなし はなだいろらし
003
SHORT PEACE
吸えば吸うほど健康によい
(Not Reefer!
高騰
オイル一缶 燃え尽さない
人間の価格
終末
水買うな!
004
夕南中月
ひとつの光だけをたよりに生きたことがあるか、
けっして裏切らない
心臓で摑んだ─
iPod Touch
「これがないと死んでしまう」
これがないと死んでしまう
言葉Ⅲ
「お爆発しろ!」
北さん!
005
一心
「文句があるなら出ていけ」
おれが消えればいい
老自戒
目の端にいたのが本物か
遠くの祭を見ていた
頭の背ろ─
「お前のためじゃない」
道を違えた
やさしくなりたい
006
家出
青いパーカー 襞になってるポケットの
─うら地の洞。
蕾が頸を突き出すように
STILL LIFE
晴てても 待つこと─覚えた、
青空の中。
誰よりも追いかけて
合言葉
ブルーのエメマン
片方の部屋の白いラックを満たすとき
─予感のひとり風となる
007
かいじゅう
退屈だ! いつか「おまえが正しかった」と言って来ても、許さない
雨の日
訣別しろ! ほんとうの出逢いはそれから
尊々殺々殺
生きる資格がない! 誓った言葉にくるしむのはもうやめにしよう
008
卯月立
火乃絵の咽仏、立派だな─
そのバスで、
どんな花が咲かせたい
一兎
姿を見る─だけでよい
運河の花。
擲げられなかった本
勾配
関ヶ原公園。
陰毛よりも陰湿な、
猫がほしい
009
Ⅰ
道は違えた
いまだに心がガキ それを守りたい
はぐれもんのあつまりの外
暗い雨の路地を見てる「ここは監獄」
火乃絵は know it 四角い空と崖からの眺め
ともだち大事 でも誓い破る それでもトモダチ?
遠くに見えるショッピングモール みんな楽しそう
うらぶれたシャッター通り 路地裏の猫を悼む
Ⅱ
ずるい人だ ぼくは
(ずるい、ずるい、ずるい、ずるい)
責任のがれ ぼくの荷物さ それは
きみのじゃない
きみのじゃない
きみのじゃない
道は違えた
やさしくなんかできない
Ⅲ
ショッピングモールのどまんなか
街の果て
─同じ光を見てた?